むかしむかしあるところに可愛い女の子・健乃ちゃんがおりました
女の子はひろばあちゃんからもらった手作りの赤いずきんがお気に入りで、いつも被っていたので、赤ずきんけんちゃんとよばれておりました。
ある日剛子母さんが言いました。
「健乃、悪いけどこれ持っておばあちゃんのお見舞い行ってきてくれる?」
そういって赤ずきんけんちゃんに焼き菓子とぶどう酒の入ったバスケットを渡しました。
「うん、わかった!」
「いい?寄り道しちゃダメよ!転んだりしたら瓶が割れちゃうから走らないでね。それから・・・」
「もー、分かってるよぉ。いってきまーす!」
赤ずきんけんちゃんは家を出発しました。
森を歌を歌いながらしばらく歩いていると狼のいのたんに会いました。
「赤ずきんけんちゃん、どこ行くの?」
「おばあちゃんのうちにいくのォー!具合が悪くてね、この焼き菓子とぶどう酒を届けるんだぁ!!」
「ふーん、おばあちゃんちって、こっから遠いの?」
「うん、この森を抜けた丘の上の一本杉があるでしょ?そこの小さな家にいるんだぁ。おばあちゃん1人ぼっちだから私が行って元気にしてあげるんだぁー!!」
「そうかい。・・・あ、そうだ!せっかくだからお花も持っていったら?そこのわき道に入るときれいなお花がいっぱい咲いているんだよぉ。摘んで持って行ってあげなよ。」
「えっ!?ホントぉ!!・・・でもお母さんに“寄り道しちゃいけない”って言われてるんだよね。」
「お花くらい大丈夫だよぉ。おばあちゃんもきっと喜ぶよ。」
「そうだね!おばあちゃん喜ぶよね。狼さんありがとう。」
赤ずきんけんちゃんはそういってわき道に入って行きました。
「ぐふふ・・・。あの子旨そうだな。よしっ、今のうちに先回りしちゃおーっと。」
狼はまっすぐひろばあちゃんの家に行きました。
ひろばあちゃんの家に着くといのたんはドアを叩き、声を裏返して言いました。
「おばあちゃん、ここを開けてくださいな。」
「おや、誰だい?」
「健乃だよ。」
「おや、けんちゃんかい?取っ手を引いてごらん。ドアが開くよ。」
「こんにちはぁぁぁっー!!」
「ぎゃあ!!狼ぃー!」
いのたんはドアを引いて中に入るとすぐにひろばあちゃんを食べてしまいました。
「よぉーし。あとはけんちゃんを待つだけだ。」
いのたんはキャップを被ってベッドの中に入りました。
「おばあちゃん、ここを開けてくださいな。」
お花を摘み終えた赤ずきんけんちゃんはドアを叩いて言いました。
いのたんは声をかすめて言いました。
「おや、誰だい?」
「健乃だよ。」
「おや、けんちゃんかい?取っ手を引いてごらん。ドアが開くよ。」
赤ずきんけんちゃんはドアを引いて中に入りました。
「おばあちゃん、具合はどうですか?焼き菓子とぶどう酒を持ってきたよ。あ、それからお花も。」
「ありがとう、そこに置いといて。」
赤ずきんけんちゃんは机にバスケットとお花を置くと、いのたんに聞きました。
「おばあちゃん、どうしてそんなに声がしゃがれてるの?」
「風邪引いちゃってね。でも大丈夫よ。こっちおいで。」
赤ずきんけんちゃんはベッドに近づきました。
「あれれ?おばあちゃん、どーしてお耳がこんなに大きいの?」
「それはお前の声を良く聞くためだよ。」
「ふーん。じゃあ、どーして足がこんなに大きいの?」
「それは早く走るためだよ。」
「ふーん。じゃあ、どーしてこんなにおめめが細いの?」
「・・・ほっとけ。」
「じゃあ、どーしてこんなにお口が大きいの?」
「お前を食べるためだよ!!!」
「きゃぁぁーっ!おばあちゃんじゃなーいっ。」
「うるせー!いっただきまぁーす!!」
いのたんはベッドから飛び出し赤ずきんけんちゃんに襲いかかり、食べてしまいしました。
お腹がいっぱいになったいのたんはそのままベッドで寝てしまいました。
剛子はいつまでも戻ってこない赤ずきんけんちゃんを心配して家の前をうろうろしていました。
そこへ銃を持った2人の猟師が通りかかりました。
「どうしたんですか?」
兄のマサユキは剛子に聞きました。
「うちの娘がおばあちゃんの家に行ったまま戻ってこないんです。」
「そういえば、最近この辺の森に狼が出るって話を聞いたけど、襲われたりしてないかな?」
弟のジュンイチがマサユキに言いました。
「心配だな。探してみましょう。」
マサユキはそう言うと、ジュンイチと剛子と一緒におばあちゃんの家に向かいました。
おばあちゃんの家からはとても大きないびきが聞こえていました。
「これ、おばあちゃんのいびきじゃないわ。」
剛子はつぶやきました。
もしやと思って3人が中に入ると、大きなお腹をした狼が堂々とベッドの上で大の字になって寝ていました。
「こいつ、まさかおばあちゃんを食べたのか!?・・・くそぉ、撃ち殺してやる!」
マサユキは銃を構えました。
「待って!もしかしたらまだ間に合うかもしれない。剛子さん、ここに良く切れるはさみはありませんか?」
「たしか、裁ちばさみがここに、・・・あ、ありましたよ。」
剛子は裁ちばさみをジュンイチに渡すとジュンイチは寝ているいのたんのお腹をじょぎじょぎ言っていきました。
途中まで切ると、赤いずきんの女の子が出てきました。
「けんちゃん!!」
「ああ、息苦しかった!・・・あ、お母さん!!」
さらに切っていくとひろばあちゃんが出てきました。
「おや、まあ。みなさんおそろいで。」
「こいつ、2人を食べてたんだな。まったくなんて奴だ!」
「どうしよっか、これ?」
5人はお腹がぱっくり開いたままのいのたんを見ました。
「そうだわ!石でも詰めちゃいましょ。」
剛子の提案で5人は石をいっぱい集めていのたんのお腹に入れてお腹を縫って塞ぎました。
その後いのたんを森の奥に運び、ひろばあちゃんの家で食事会を開きました。
ひろばあちゃんは赤ずきんけんちゃんの持ってきた焼き菓子とぶどう酒ですっかりげんきになりました。
「あーあ、よく寝た。・・・あれ!?み、妙に重いな。」
目を覚ましたいのたんはお腹があまりにも重過ぎて、うつぶせになったまま動けませんでした。
「う、うー・・・だ、誰か助けてぇー・・・。」
・・・誰も助けてはくれませんでした。